女帝
女帝(じょてい[1])は、女性の皇帝、あるいは天皇のこと。後者の現代的表現としては女性天皇がある。女皇(じょこう)ともいう[2]。
概説[編集]
ヨーロッパの言語では、一般に女帝と皇后は区別されない(例えば英語ではともに"empress")が、前者は自らが帝位を有するのに対し、後者は配偶者が帝位を有するのであり、概念上は区別される。表現上も区別する場合には、例えば英語では、女帝は"empress regnant"といい、皇后は"empress consort"という。
前皇帝の血族である女性が即位する場合と、皇帝家の血族ではない皇后が夫などの死後、女帝として即位する場合が多い。ロシアのエカチェリーナ2世や東ローマ帝国のエイレーネーは後者の例である。
また、書によっては女性が皇帝の後見として政治を行う場合に「女帝」と呼ぶ場合もある。このような例には東ローマ帝国がある。
マリア・テレジアは神聖ローマ皇帝ではなくその皇后に過ぎないが、ハプスブルク家の家長として絶大な権威と広大な領土を保持していたことから、日本ではしばしば女帝と呼ばれる。夫のフランツ1世シュテファンは、共同統治者であるだけでなく神聖ローマ皇帝として帝位にもあったが、宮中で軽んじられていた。
日本の女帝[編集]
「女性天皇」も参照
- 推古天皇(第33代、在位592年 - 628年) - 第29代欽明天皇の皇女、第30代敏達天皇の皇后
- 皇極天皇(第35代、在位642年 - 645年) - 敏達天皇の男系の曾孫、第34代舒明天皇の皇后
- 斉明天皇(第37代、在位655年 - 661年) - 皇極天皇の重祚
- 持統天皇(第41代、在位686年 - 697年) - 第38代天智天皇の皇女、第40代天武天皇の皇后
- 元明天皇(第43代、在位707年 - 715年) - 天智天皇の皇女、皇太子草壁皇子(天武天皇皇子)の妃
- 元正天皇(第44代、在位715年 - 724年) - 草壁皇子の娘、生涯独身
- 孝謙天皇(第46代、在位749年 - 758年) - 第45代聖武天皇の皇女、女性天皇の中で唯一皇太子からの践祚、生涯独身
- 称徳天皇(第48代、在位764年 - 770年) - 孝謙天皇の重祚、道鏡を重用
- 明正天皇(第109代、在位1629年 - 1643年) - 第108代後水尾天皇の皇女、生涯独身、徳川幕府第2代将軍・秀忠の孫、第3代将軍・家光の姪
- 後桜町天皇(第117代、在位1762年 - 1770年) - 第115代桜町天皇の皇女、生涯独身
日本以外の女帝[編集]
- 漢字文化圏の皇帝号
- ヨーロッパの皇帝号
- エイレーネー(東ローマ帝国)
- ゾエ(東ローマ帝国)
- テオドラ(東ローマ帝国)
- アンナ(ロシア帝国)
- エリザヴェータ(ロシア帝国)
- エカチェリーナ1世(ロシア帝国)
- エカチェリーナ2世(ロシア帝国)
- ヴィクトリア(インド帝国、イギリス女王が「インド女帝」を兼摂)
- テオドラ (トレビゾンド皇帝)(英語: Theodora of Trebizond)(トレビゾンド帝国)
- エイレーネー・パレオロギナ(英語: Irene Palaiologina of Trebizond)(トレビゾンド帝国)
- アンナ (トレビゾンド皇帝)(英語: Anna Anachoutlou)(トレビゾンド帝国)
- ウラカ(「ヒスパニア女帝」を名乗)
- マリア・アンゲリナ(英語: Maria Angelina Doukaina Palaiologina)(エピロス専制侯国、君主号で「バシリサ」を名乗、当時東ローマ女帝の称号が「バシリサ」)
- ゼノビア(パルミラ帝国、「アウグスタ」を名乗、息子の共同君主)
- イリナ・ゴドゥノヴァ(ロシア・ツァーリ国、夫の死後に一時的に在位)
- カトリーヌ・ド・クルトネー(フランコクラティア、亡命ラテン女帝、ギリシャの十字軍国家において女帝として認められた。)
- カトリーヌ・ド・ヴァロワ=クルトネー(フランコクラティア、亡命ラテン女帝、ギリシャの十字軍国家において女帝として認められた。)
- 中東の皇帝号
- ラズィーヤ(奴隷王朝のスルターンだがパーディシャーの称号も使用)
- ボーラーン(サーサーン朝、女性の諸王の王)
- アーザルミードゥフト(サーサーン朝、女性の諸王の王)
- ムサ (パルティア、女性の諸王の王)
- ザウディトゥ(エチオピア帝国、女性の諸王の王)
- タマル (グルジア王国、女性の諸王の王)
- ルスダン(グルジア王国、女性の諸王の王)
- クレオパトラ7世(プトレマイオス朝、女性の諸王の王)
- バラマハデヴィ(英語: Ballamahadevi)(アルパ王朝(英語: Alupa dynasty)、女性の諸王の王)
- トリブヴァナ・マハデヴィ3世(英語: Tribhuvana Mahadevi III)(バウマ・カラ王朝(英語: Bhauma-Kara dynasty)、女性の諸王の王)
- ダンディ・マハデヴィ(英語: Dandi Mahadevi)(バウマ・カラ王朝(英語: Bhauma-Kara dynasty)、女性の諸王の王)
- ダルマ・マハデヴィ(英語: Dharma Mahadevi)(バウマ・カラ王朝(英語: Bhauma-Kara dynasty)、女性の諸王の王)
- 女帝または摂政
- テオドラ (テオフィロスの皇后)(英語: Theodora (wife of Theophilos))(東ローマ帝国、女帝説あり)
- エウドキア・マクレンボリティサ(東ローマ帝国、女帝説あり)
- アトトストリ(英語: Atotoztli II)(アステカ、女帝説あり)
- ウィクトリア (ガリア帝国)(英語: Victoria (Gallic Empire))(ガリア帝国、ゼノビアと共に「ヒストリア・アウグスタ」で30人僭主 (ローマ帝国)(英語: Thirty Tyrants (Roman))の中でそ2人の女性)
比喩[編集]
現代の社会において、一定の地位(会社経営など)で活躍する女性を例えて「女帝」と表現することもある。(例、東京都知事の小池百合子。小池を取り上げた『女帝 小池百合子』と題する本がある。)
脚注[編集]
- ^ 北畠親房『神皇正統記』では「女帝」と書いて「にょたい」と読む用例がある。
- ^ “女皇(精選版日本国語大辞典)”. コトバンク. 小学館. 2023年3月7日閲覧。