ヤマハ・GX-1

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GX-1

GX-1(ジーエックスワン)は、1975年に発表されたヤマハキーボードの1機種。

概要[編集]

当時のエレクトーンの最高機種を作るというコンセプトで開発されたとされる機種。ただし音源部は、それまでのエレクトーンとは異なり、アナログ・シンセサイザーの基本構造とされるVCO/VCF/VCAで成り立っており、それらの機能をコントロールして音色を時間的に変化させることを可能にしている。したがって実体としてはシンセサイザーであり、現在ではヤマハの公式情報サイト(下記)でも「ポリフォニックシンセサイザー化…」という文言が記述されている。

上記の理由から、ポピュラー音楽(特にロック)の演奏家やリスナーからポリフォニックシンセサイザーとして認識され、当時のロック音楽誌などでも記事が掲載された。また、その機能の充実度や価格の高さ(約700万円)から「ドリーム・マシン」と紹介されたこともある。また音源や鍵盤制御の方式は、その後、名実ともにポリフォニックシンセサイザーとして発表された「CSシリーズ(初期の「CS-80」「CS-60」「CS-50」)」に転用された。

GX-1 の白い筐体のデザインは、それ以前にヤマハが開発していた EX-21(市販されず、プロトタイプのみ)および EX-42を受け継いでいるものと考えられている。GX-1 が市販される前には、プロトタイプの GX-707(開発コードネーム)が試作されていた。GX-1 は GX-707 の重量(330kg弱あった)を軽減するなどの改良を行なったものである。

また、GX-1の後継機種のエレクトーン EX-1, EX-2, FX-1,HX-1(System1), ELX-1, ELX-1m, ELS-01X, ELS-02X が後にヤマハから発売されている。

構造[編集]

全体で最大8音の同時発音数で、それぞれ2つずつのVCOを持つ(計16VCO)。3段の鍵盤を持ち、最上段は後年ショルダーキーボードのKX-5でも使われた、奥行きの短い鍵盤を使っている。その他、リボンコントローラーも装備する。プリセットも備えるが、これは後年のCS-80と同じく「小型化されたコントロールパネル」で音色を設定しておくもの。宇宙船のような未来的かつ非常に大型な外観を持っており、重量は250kgほどであった。

主なユーザー[編集]

エマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP)。アルバム『ELP四部作』(1977年)の「庶民のファンファーレ」と「海賊」、さらに同アルバムの収録曲の演奏を中心にした『ワークス・ツアー』(1977年5月開始)で使用。モントリオールのオリンピック・スタジアムでの演奏の模様(同年8月26日)はDVDビデオソフトに収録された。彼のGX-1は足鍵盤と椅子が除去され、パネル左上の Electone のロゴの部分にプッシュ・ボタンが数個埋め込まれているのが写真で確認できる。彼はインタビューで、GX-1はチューニングが不安定なので対処すべく改造を施したと述べているが、これらのプッシュ・ボタンがその改造によるものなのかは不明である。

その後、自宅の納屋に保管していた1台が納屋に突っ込んだトラクターによって大破して使用不可能になってしまったので、彼は1台をジョン・ポール・ジョーンズより購入した。彼はGX-1をかなり気に入って、エマーソン・レイク・アンド・パウエルの映像(1986年)やELPの『ブラック・ムーン』(1992年)のプロモーションビデオなどを含めて1990年代初頭まで使用した。なお彼がカール・パーマーと結成したスリー(1988年)のライブでは、エレクトーンのHS-8が代用された。

レッド・ツェッペリン。彼が主体となって制作したアルバム『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』(1979年)で使用。同時期のコンサートでも、それまでのツアーで使用していたメロトロンに代えて使った。後年、上記のようにエマーソンに売却。

アルバム『キー・オブ・ライフ』(1976年)で全面使用。「ヴィレッジ・ゲットー・ランド」ではGX-1による弦楽四重奏を披露した。彼はGX-1を2台購入して「ドリーム・マシーン」と呼んで愛用していた。現在、1台はラスベガスマダム・タッソー館の彼の蝋人形のコーナーで、蝋人形が演奏している形で展示されている[1]

元・トレースエクセプション。GX-1とリズムマシンのみを使ったソロ・アルバム『GX 1』[2](1977年)を発表。

元・トリアンヴィラート。リースしてアルバム『ア・ラ・カルト』(1978年)で使用。

エマーソンのGX-1を購入。

音楽プロデューサー。1台を自宅で使用。

ABBA。ABBAの"The day before you came"などのほか、ライヴでも使用。現在はストックホルムの Roth Händle Studio に置いてある。

ピンク・フロイド。短期間所有していたがレコーディングには使用せず。

アルバム『La Vie Electronique 3』(2009年)のジャケットにGX-1を操作している写真が使われている。彼が所有していたのか、どの曲で使われたのかなどは不明。

イアン・ギラン・バンド。GX-1を弾いているライヴの写真が存在する。彼が所有していたのか、どの曲で使われたのかなどは不明。

イギリスのテクノ、アンビエント系のミュージシャン。使用機材の一覧の中にGX-1の名称が記載されている。彼が所有していたのか、どの曲で使われたのかなどは不明。

トッド・ラングレン率いるユートピアのキーボード奏者。1976年のユートピア初の日本公演で使用。

エレクトーン奏者。当時に日本の各地にてエレクトーン教室の発表会にゲスト出演し、GX-1 またはその前身機種である EX-42 を演奏していた。

日本のエレクトーン奏者。1976年に連名でアルバム『GX-1 Yamaha Electone ~ GX-1がひらく新しい音楽の世界』[4]を発表。

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ pinterest.com”. 2024年6月2日閲覧。
  2. ^ Discogs”. 2024年6月2日閲覧。
  3. ^ Discogs”. 2024年6月2日閲覧。
  4. ^ Discogs”. 2024年6月2日閲覧。

外部リンク[編集]